相続税申告を自分でするときの注意点について
相続税の申告は自分ですることも可能です。ただし税理士などの専門家を利用しない場合は、税制のこと、法律上のルールについてご自身で調べながら、ミスのないように慎重に作業を進める必要があります。
ここでは特に注意すべきポイントをまとめましたので、「自分で申告をやってみよう」と考えている方はぜひご一読ください。
相続税申告の手順
相続人が1人であれば相続手続が比較的単純になりますが、複数の相続人がいるときはまず遺産分割をしなければならず、そのためには相続人の調査もしないといけません。
そこで相続税申告をするまでには次の手続を進めていくことになります。
- 相続人の調査を始める
被相続人の一生分の戸籍謄本等を集めて、法定相続人の存在を明らかにしていく。 - 遺産の調査を始める
被相続人の自宅を調べて手がかりとなる資料を集めて、口座の残高や不動産の存在を調べていく。負債が大きい場合は相続放棄や限定承認も検討する。 - 各財産の相続税評価額を調べる
見つかった財産について、相続税の計算上いくらになるのかを評価していく。 - 遺産分割協議を行う
相続人の全員が参加して、各自が取得する財産を定める。その後相続登記など、必要に応じて名義変更等の手続を行う。 - 相続税の計算と申告書の作成を行う
相続人各自が納めるべき税額を計算する。税額控除や各種特例の利用なども確認し、適用していく。 - 申告書の提出と相続税の納付を行う
申告書や添付書類を税務署に提出し、算出された税額を納める。
すべて相続人自身で進めていくことは可能ですが、専門知識が必要になるうえに作業量が膨大です。
そこで税理士にやり方を相談したり、作業の代行を依頼したりするのが一般的ではあります。
自分で相続税の計算・申告をする注意点
ご自身で相続税に関する手続を対応する場合、以下で紹介することには十分留意してください。
法定相続人は戸籍情報から読み取ること
「相続人の調査」は相続手続の基本です。
そして法定相続人の数は相続税額にも大きく影響するため、相続開始後まず取り組むべき重要な作業といえます。
そして注意したいのは調査をあいまいに終わらせないことです。
大方、法定相続人の存在は身内で知れています。
配偶者と子どもが相続人になるケースが多く、亡くなった方の夫や妻、子どもは誰か、ということで悩むことはないと思います。
しかし、把握できていない人物が後から出てくるケースがあります。
元配偶者との間に生まれた子どもがいることもあれば、隠し子がいることもあるのです。
そのようなリスクを排斥するため、調査をするときは戸籍謄本等の取得請求を行いましょう。
「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」を一生分集めて、一つひとつ情報を読み取っていくのです。
過去の贈与分にも調査範囲を広げること
相続人の調査に加え、「遺産の調査」も必須の作業です。
被相続人がどんな財産を持っていたのかが分からなければ遺産分割ができませんし、各自が取得する財産も定まらないからです。
そしてこのとき注意したいのが、過去に被相続人が贈与した財産についても調査をするということです。
生前贈与された財産を調べるのには大きく2つの意味があります。
- 特別受益の存在が各自の相続分に影響するため
- 過去7年分※の生前贈与は相続税の計算に含めるため
※2024年以降の贈与に「前7年」の期間が適用。2023年以前の贈与は「前3年」の期間が適用される。
遺産の先渡しをしたと評価される、特に高額な贈与などは「特別受益」と評価されることがあり、この場合は生前贈与分も相続財産に持ち戻して法定相続分が計算されます。その結果、各自の取得分が変動し、納めるべき相続税の大きさも変わる可能性があるのです。
また、過去の7年分の生前贈与については原則として相続財産に含める扱いになっています。
そのため相続開始後に調査すべき対象は今現在の財産だけではなく、過去にあった贈与の記録なども調べていかなくてはなりません。
このことを忘れないようにし、また、調査漏れがないように注意しましょう。
時間に余裕をもって計画的に取り組む
相続手続一連でしないといけないことはたくさんあります。
税理士に頼まずご自身で対応するとなればより長い時間が必要になり、手続の都度、やり方・進め方などを調べることにもなるでしょう。
しかし相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から計算して「10ヶ月以内」に済ませないといけません。相続税の納付も同様です。
時間があるように思うかもしれませんが、その間には相続人や遺産の調査、遺産分割協議、必要書類の取得請求、財産の評価なども行わなければならず、間に合わなくなる可能性も十分にあります。
そして申告が間に合わず無申告になってしまったり、正確な計算ができなかったりすると、無申告加算税や過少申告加算税がペナルティとして課されます。期限内に収められなかった税額に対して延滞税も発生します。
数割増しで税負担が発生することになるため、ご自身で対応するのであればなおさら時間に余裕をもって、早めに対応していくよう注意しなくてはなりません。
評価方法を間違えないようにする
仮に相続税の計算方法が理解できていたとしても、肝心の評価額が把握できていないと計算を進めることができません。
そしてこのときの相続税評価額を一般の方が調べるのは難易度が高く、特に土地や株式が遺産に含まれているときはミスが発生しやすいです。
他の財産に関してもそうですが、評価額の計算を間違えてしまうとその後の相続税の計算すべてが狂ってしまいますので評価方法やその計算には慎重にならなくてはいけません。
税理士に相談すべきケースとは
以上の注意点も踏まえて、次の場合には相続手続や相続税の申告に関して税理士に相談した方が良いといえます。
- 税制や相続制度に詳しくない
- 被相続人が過去に贈与をした形跡がある
- 相続人自身に時間的余裕がない
- 土地や株式を相続する
これらのケースにおいて無理にご自身で対応しようとすると、計算ミスが生まれやすく、期限までに申告ができない可能性も高くなります。
また、単純に「遺産の総額が大きい」ケースでも税理士に対応を任せた方が良いです。
多くの遺産があるときは調査や計算の手間が大きく複雑化し、相続税の額も大きくなりやすいです。
ちょっとしたミスが原因で、本来納めるべき税額と大きな差額が生まれてしまうこともあります。
そうするとペナルティとして徴収される税額も大きくなってしまうのです。
税理士がついていればこうしたリスクを回避しやすくなります。
作業にかかる負担も軽減され、さらに、特例等の適用を検討することで税負担も下げられるかもしれません。
そのため申告への対応に少しでも不安がある方、税負担を必要最低限に抑えたいという方は税理士に一度相談することをおすすめします。
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税理士紹介Certified Public Tax Accountant

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- 所属団体
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- 東京税理士会京橋支部
- 全国宅地建物取引業協会連合会
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- 経歴
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- 昭和63年株式会社伊勢丹
- 平成4年税理士国家試験 合格
- 平成9年株式会社タクトコンサルティング
- 平成19年独立「薬袋税理士事務所」開業
事務所概要Office Overview
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