遺言で不動産を寄附したときの課税
|譲渡所得の発生や準確定申告について
遺言により不動産を遺贈(寄附)することも可能です。ただし遺贈先が法人であって、当該財産について取得時からの値上がりがあるときは、譲渡所得としてみなされるルールがあるため注意しましょう。
そしてこのときは相続人に準確定申告の義務が課されますので、一定期間内に手続きを行うことも覚えておいてください。
遺言書を使えば相続人以外にも遺贈が可能
遺産は相続人に承継されていくのが一般的な流れです。
しかし遺言書を作成し、そこに相続人以外への遺贈を行う旨を記載しておけば、相続人以外に遺産を渡すこともできます。
法人への寄附もできる
身寄りのない方であって、その他遺贈を使って遺産を渡したい身近な方もいない場合は、遺贈による寄附も検討するといいかもしれません。
遺言書を使えば法人への寄附も可能ですので、仮に相続人がいる場合であっても公益法人、慈善団体などに財産を渡せます。
寄附をする場合でも遺産のすべてを渡す必要はありませんので、遺産の一部に絞って寄附を行い残りは身近な人に相続してもらう、といったこともできます。
法人への遺贈(寄附)に対する課税
法人への遺贈による課税にはご留意ください。
土地・建物などの財産を法人に遺贈したとき、遺贈時の時価(取引価額のこと。)により譲渡があったものとみなされます。
(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林・・・又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
・・・
通常、相続人などに対する遺贈であればまず受遺者に相続税が課税されます。そして受遺者は資産の値上がり益(値上がりがあるなら。)も引き継ぐことになりますので、当該財産を将来譲渡すると譲渡所得の課税がなされます。
一方、法人に対する遺贈で同じ取り扱いをしてしまうと、本来所得税が課税されるべき場面で法人税が課税されてしまいます。
この不都合が起こらないよう、上記規定により「法人に対する遺贈(その他死因贈与などによる無償譲渡も含む)については、時価による譲渡があったとみなし、譲渡所得の課税を行う」というルールになっています。
相続から4ヶ月以内の準確定申告が必要
上述のとおり、寄附をした財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対し被相続人の譲渡所得が発生しますので、所得税の処理を行わなければなりません。
しかしながら、遺贈者の死亡により遺贈の効果は生ずるため、遺贈者自身で確定申告を行うことはできません。
そこで、相続人が遺言者に代わり所得税の申告を行う「準確定申告」が必要となります。
そしてこの準確定申告は、「相続開始を知った日の翌日~4ヶ月以内」の期間中に行わなければなりません。
準確定申告が不要となるケース
法人への遺贈があっても、常に準確定申告を要するわけではありません。
まず、値上がり益が発生していないのであれば所得も発生しませんし、次の規定により、上記規定の適用上は遺贈がなかったものとみなされることもあります。
(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)
第四十条 国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人・・・その他の公益を目的とする事業・・・を行う法人・・・に対する財産・・・の贈与又は遺贈・・・で、当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること、当該贈与又は遺贈に係る財産・・・が、当該贈与又は遺贈があつた日から二年を経過する日までの期間・・・内に、当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みであることその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする。
同規定は国・地方公共団体に対する遺贈を基本としていますが、後段部分にて「公益法人等※」に対する遺贈でも一定の要件を満たし国税庁長官の承認を受けたときは所得税が非課税になるとあります。
※公益社団法人、公益財団法人、そのほか学校法人や社会福祉法人、宗教法人、特定NPO法人など。
準確定申告の流れ・やり方
準確定申告を行う場合でも、一般的な確定申告書を使います。
ただし通常とは異なり、書面の「確定申告書」とある箇所には「準」を書き足し、住所・氏名欄には被相続人と相続人両方の情報を記載します。また、死亡年月日の記入を行うなどの違いもあります。
なお、提出先は被相続人の住所を管轄とする税務署を基準とします。
相続人等が複数人いるときは別途作成すべき書類が出てくるなど手続きで悩むことも出てくるかと思います。
わからないことがあるときは早めに税理士にご相談ください。
不動産を寄附するときの問題点
法人への寄附を検討するときは、「相手方が受け入れてくれるかどうか」も考えなくてはなりません。
金銭を遺贈する場合には受け取ってもらえる可能性が高いですが、その対象物が不動産だと、受け取ってもらえない可能性も出てきます。
不動産の場合、そのまま事業活動に使うことができなかったり管理が必要になったり、相手方にも一定のリスクが生じるためです。
そのため遺言書を使った不動産の寄附を検討している方は、前もって寄附先となる法人に対し「不動産遺贈を受け付けているかどうか」の確認を取っておきましょう。
そのうえで相続人となる方の準確定申告の負担にも配慮し、税理士に相談しながら遺言書の作成を進めていくと良いでしょう。
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- 平成4年税理士国家試験 合格
- 平成9年株式会社タクトコンサルティング
- 平成19年独立「薬袋税理士事務所」開業
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