相続税申告でチェックすべき税額控除~6つの控除制度の要件と計算方法について~
遺産の総額が基礎控除額(3,000万円以上)を上回るなら、相続税の納付が必要になるかもしれません。しかし、相続税法では控除制度が用意されており、この適用を受けることで税負担を軽減あるいは回避することができる可能性もあります。
ここでその税額控除6種について紹介し、それぞれ適用を受けるための要件や具体的な控除額を計算する方法を解説していきます。
配偶者控除:被相続人の夫・妻が使える
配偶者控除(配偶者に対する相続税額の軽減)の制度は、被相続人の夫や妻であれば適用できるもので、遺産を法定相続分または1億6,000万円まで非課税で取得できるようになる仕組みになっています。
遺産の維持や形成に貢献してきた被相続人の夫や妻の貢献、残された配偶者の生活保障、二次相続が比較的早期にやってくる可能性が高いこと等を考慮して運用されており、ほかの控除制度と比べてもとても軽減効果の大きな優遇措置となっています。
《 適用要件 》
- 被相続人と法的な婚姻関係にあること
※相続放棄をして相続人ではなくなっていたとしても適用可能。
※婚姻届を出していない内縁関係者は適用不可。 - 相続税の申告書に当該制度の適用を受けようとする旨を記載して提出すること
※適用を受けて納付税額が0円となるケースでも申告は必須。ただし、申告書の提出がない場合でも税務署長が「やむを得ない事情がある」と認めたときは適用を受けられる。
《 控除額の計算方法 》
- 法定相続分相当額を算出・・・①
※[課税価格の合計額×法定相続分]で計算。
※その金額が1億6,000万円未満なら、①を1億6,000万円とする。 - 取得した課税価格(1,000円未満は切り捨て)を算出・・・②
- 軽減額を算出・・・③
※[相続税の総額×(①と②の低い金額を採用)/課税価格の合計額]で計算 - 控除額を調べる
※配偶者控除適用前の算出相続税額と③の値を比較し、低い金額を採用。
例1)法定相続分に従い1億円を取得。算出相続税額は2,300万円。なお遺産の課税価格の合計額は2億円、相続税の総額は4,600万円とする。
①の算出・・・法定相続分相当額は1億円であるため、①は1億6,000万円となる
②の算出・・・取得した課税価格は1億円であり②は1億円
③の算出・・・軽減額は、[相続税の総額4,600万円×(①と②の低い方である1億円/課税価格の合計額2億円)]を計算し、2,300万円となる
算出相続税額および③の軽減額はいずれも2,300万円となるため、配偶者控除の金額は2,300万円。当該配偶者の納付税額は0円になる。
例2)法定相続分1億円を超え、1億8,000万円を取得。算出相続税額は5,500万円。なお遺産の課税価格の合計額は2億円、相続税の総額は5,750万円とする。
①の算出・・・法定相続分相当額は1億円であるため、①は1億6,000万円となる
②の算出・・・取得した課税価格は1億8,000万円であり②は1億8,000万円
③の算出・・・軽減額は、[相続税の総額5,750万円×(①と②の低い方である1億6,000万円/課税価格の合計額2億円)]を計算し、4,600万円となる
算出相続税額は5,500万円、③の軽減額は4,600万円であるため、配偶者控除の金額は低い方の4,600万円。当該配偶者の納付税額は[5,500万円-4,600万円=900万円]になる。
未成年者控除:18歳未満が使える
未成年者控除は、18歳未満の法定相続人が適用を受けられる税額控除です。
未成年者に対しては養育費の負担が生じることを踏まえて設けられており、年齢に対応した控除額が適用される仕組みになっています。
《 適用要件 》
- 法定相続人であること
※相続放棄により相続人に該当しなくなっても適用可能。 - 18歳未満であること
※胎児も適用可能。
《 控除額の計算方法 》
[10万円×(18歳-その者の年齢(1年未満は切り捨て))]
つまり、法定相続人が17歳であるなら10万円、10歳であるなら80万円、胎児であるなら満額の180万円が控除可能ということになります。
障害者控除:精神・身体に障害がある者等が使える
障害者控除は、85歳未満の障害者である法定相続人が適用を受けられる税額控除です。
障害者の生活保障、社会福祉の増進を目的としており、障害の程度や当該人物の年齢に対応した控除額が適用される仕組みになっています。なお、障害者控除と未成年者控除の併用は可能です。
《 適用要件 》
- 法定相続人であること
- 障害者であること
- 国内に住所を有すること
※障害者控除における「障害者」とは |
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以下のいずれかに該当する者を指す。
※そのうち精神または身体に重度の障害がある方については「特別障害者」として控除額が大きくなる。 |
《 控除額の計算方法 》
[10万円※×(85歳-その者の年齢(1年未満は切り捨て))]
※特別障害者なら20万円
つまり、60歳の一般障害者であれば控除額250万円、特別障害者であれば500万円が控除可能ということになります。
相次相続控除:10年以内に相続が続いた場合に使える
相次相続控除は、短期間に重ねて相続が発生したときの税負担を軽減するための仕組みです。
一次相続において相続税を課せられた財産に対して、二次相続でも相続税が課せられた場合、相続の間隔が短いほど大きな控除が適用できるようにできています。
《 適用要件 》
- 二次相続における被相続人が、当該相続の前10年以内に起こった相続において遺産を取得していること
- 二次相続において相続または遺贈で遺産を取得したこと
《 控除額の計算方法 》
相次相続控除の総額を調べる簡易的な算式
[A×(10-B)/10]
※Aは一次相続において課せられた相続税額(附帯税の分は除く)
※Bは一次相続から二次相続までの年数(1年未満は切り捨て)
そして各相続人の控除額は、控除額の総額を純資産価額の比で各相続人に案分して算出します。
たとえば、相続人ら全員が取得した財産から債務控除を適用した純資産価額が1億円であり、ある相続人がそのうち2,500万円を取得した場合には、当該相続人は控除額の総額の1/4を適用できることになります。
※純資産価額には生前贈与加算の適用を受ける贈与財産は含まないが、相続時精算課税の適用を受ける贈与財産は含む。
※相次相続控除の金額の厳密な計算方法 |
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厳密に計算する場合、[A×(10-B)/10]の算式にさらに次の要素を乗じる。
「一次相続で取得した純資産価額(X)から一次相続で課せられた相続税額(Y)を控除した金額」に対する「二次相続で相続人等全員が取得した価額の合計額(Z)」の割合(=Z/X-Y) ※この割合が1を超えるときは1を乗じる。
これはつまり、二次相続までに遺産を食いつぶして財産が減っているときはその割合に応じて控除額が小さくなることを意味する。反対に、遺産を維持もしくは増えているときは一次相続での相続税額(A)をもとに控除額を算出する(上の簡易的な算式で良い)ということになる。 |
贈与税額控除:二重課税があるときに使える
贈与税額控除は、「生前贈与加算」された贈与財産があり、贈与税との二重課税があるときに適用を受けられる税額控除です。
生前贈与加算とは、相続開始前一定期間内に贈与された財産を相続財産へ加算する仕組みのことであり、このとき贈与税と相続税が重ねて課税されるケースがあるのです。この二重課税を排除するための仕組みが贈与税額控除です。
《 適用要件 》
- 生前贈与加算された贈与財産があること
- 当該財産につき課せられた贈与税があること
《 控除額の計算方法 》
[贈与税額×生前贈与加算された価額/贈与税の課税価格]
※贈与税額に附帯税(申告漏れや滞納に対するペナルティの部分)は含めない。
※1円未満は切り捨て。
ある年に行われた贈与の課税価格が3,000万円で、そのうちの1,500万円分が生前贈与加算の対象になったとしましょう。贈与税額が1,250万円だとすれば、贈与税額控除の金額は[1,250万円×1,500万円/3,000万円=625万円]という計算になります。
※相続時精算課税を適用した贈与財産がある場合 |
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相続時精算課税適用財産に係る贈与税額に関しても、二重課税を排除するため相続税額から控除する。このときの贈与税額控除の金額は、贈与時の価額から特別控除2,500万円を控除した金額に一律20%の税率を乗じて算出する。 当該財産に係る贈与税額は相続税の概算払いとして処理されていることから、控除しきれない金額が生じることもあり、この場合はその部分につき還付を受けられる。 |
外国税額控除:二重課税があるときに使える
国外財産に関して国際間の二重課税が生じることもあります。この過大な負担を調整するための仕組みが外国税額控除です。
《 適用要件 》
- 相続や遺贈で法施行地外の財産を取得していること
- 取得した国外財産に対し、その地の法令に従い相続税相当の税が課せられていること
《 控除額の計算方法 》
以下①と②を比較し、いずれか少ない方が控除額となる。
- 外国で課せられた相続税相当の税額
- 日本の相続税法に従い算出した相続税額×(在外財産の価額-在外財産に係る債務)/(純資産価額+相続開始年分の生前贈与加算額)
実際に課せられた外国税額が円換算で800万円(①)であったとします。
これに対し日本の相続税法に従い算出された税額が600万円、被相続人からの在外財産が4,000万円(債務控除後)、被相続人から取得した財産の合計が1億2,000万円だとすれば②は[600万円×4,000万円/1億2,000万円=200万円]となります。
①と②を比較し小さい方の200万円を外国税額控除として適用することが可能と判別できます。
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