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不動産を贈与した際の贈与税の計算方法とは? 特例税率が適用されるケース、相続時精算課税制度に基づく計算方法も紹介

財産を贈与したとき、その財産の価額に応じた贈与税が課税されます。不動産についても例外ではありません。そこで当記事では不動産を贈与した際の贈与税の計算方法について紹介し、状況に応じて適用される税率や相続時精算課税制度を活用するときの贈与税についても解説していきます。

不動産贈与に関する贈与税の計算方法

贈与税は、「11日~1231日までの贈与により得た財産の価額」をもとに計算します。その合計額に110万円の基礎控除を適用し、基礎控除後の課税価格に対して税率と税額控除適用して贈与税は算出されます。

 

後述する相続時精算課税制度ではなく、原則的な課税方式である暦年課税制度に基づく計算をするとき、110万円の基礎控除は常に適用できます。そのため1年間に110万円以内の贈与であれば納税の必要はありません。

 

ただ、不動産は価額が110万円を超え、1つの物件あたり数千万円の価値で評価されることもあります。そのため不動産贈与を受けたとき、多くの場合は贈与税が課税されることでしょう。

 

なお、贈与税額を決定づける税率については「一般税率」と「特例税率」の2パターンがあります。これらのパターンそれぞれを次に説明します。

一般税率が適用されるケース

後述する特例税率の適用ができる条件を満たさない場合は、こちらの一般税率を適用して贈与税を計算します。兄弟間や夫婦間での贈与、未成年の子どもに対する親からの贈与などでは次の一般税率が適用されます。

 

なお、贈与財産が現金や動産であっても、不動産であっても違いはありません。

 

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円

10%

300万円

15%

10万円

400万円

20%

25万円

600万円

30%

65万円

1,000万円

40%

125万円

1,500万円

45%

175万円

3,000万円

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) 一般税率の速算表」

 

基礎控除の適用後、課税価格が1,000万円となる不動産を贈与したとしましょう。このとき上の速算表を参照すると、適用される税率は「40%」、そして125万円の税額控除が適用されることが分かります。つまり、次の計算式で贈与税が算出できます。

※税率を乗じた後に控除を適用することに注意

 

例1)贈与税額 = 1,000万円×40%-125万円

        = 275万円

 

基礎控除後の課税価格が4,000万円だとすれば、贈与税額は次のように計算されます。

 

例2)贈与税額 = 4,000万円×55%-400万円

        = 1,800万円

 

想像より税負担が大きいと感じた方も多いのではないでしょうか。家族間で不動産を贈与しただけで数百万円、場合によっては数千万円もの贈与税を納めないといけなくなります。贈与財産が不動産の場合は売却しない限り手元の現金が増えるわけではありませんので、もともと受贈者が持っていた現金等から納付に対応しないといけません。

特例税率を適用できるケース

次の条件を満たす場合、前項の一般税率ではなく下の速算表に示す特例税率を適用して贈与税の計算を行うことができます。

 

① 受贈者は、贈与を受けた年の11日にはすでに18歳以上になっていること

② 贈与者は受贈者の直系尊属(両親や祖父母など)であること

 

つまり、成人した子ども、あるいは孫などに対する贈与があったときに特例税率が適用可能になるということです。不動産の贈与でも適用可能です。

※配偶者の親からの贈与には適用できない

 

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円10%
400万円15%10万円
600万円20%30万円
1,000万円30%90万円
1,500万円40%190万円
3,000万円45%265万円
4,500万円50%415万円
4,500万円超55%640万円

参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) 特例税率の速算表」

 

基礎控除後の課税価格が1,000万円となる不動産を贈与したとしましょう。このとき特例税率の適用ができる場合、税率は「30%」、そして90万円の税額控除となります。つまり、次の計算式で贈与税が算出できます。

 

例1)贈与税額 = 1,000万円×30%-90万円

        = 210万円

 

一般税率を適用したときの贈与税額は275万円でしたので、65万円も税負担が軽くなったことが分かります。

 

続いて、基礎控除後の課税価格4,000万円の場合を考えてみます。

 

例2)贈与税額 = 4,000万円×50%-415万円

        = 1,585万円

 

一般税率を適用したときの贈与税額は1,800万円でしたので、215万円も税負担が軽くなっています。

【法改正】生前贈与加算期間が3年から7年へ延長

改正により、相続の3年前までに贈与した財産が相続財産に加算される資産だったものが、7年前までに贈与した財産までと延長されます。

 

改正は、令和611日以降の贈与から徐々に期間が延長されることとなっており、令和131月以降から7年間が加算されます。

相続時精算課税制度に基づく贈与税の計算方法

「相続時精算課税」というもう1つの課税方式を選択することもできます。この場合、贈与時は贈与財産2,500万円まで非課税となり、相続開始後の相続税を計算するときにその分を精算することになります。

 

不動産を贈与するときでも、価額が2,500万円以下であれば、贈与税の負担がなくなります。

2,500万円を超えた分については20%の税率が一律に適用される

 

上でも紹介した例で考えてみます。
基礎控除後の課税価格1,000万円の不動産を贈与する場面では、特例税率を適用したときでも210万円の贈与税が発生していました。しかし相続時精算課税制度に基づく計算だと、0円で済みます。
基礎控除後の課税価格4,000万円の不動産だと、特例税率の適用をしても贈与税額1,585万円です。これが相続時精算課税制度に基づく計算だと、次のように贈与税が求まります。

 

贈与税額 = (4,000万円-2,500万円)×20

     = 300万円

 

特例税率を適用したときと比べても1/5以下、一般税率を適用したときと比べると1/6にまで税負担が抑えられています。

 

ただし相続時に精算を行う必要がありますので、必ずしも節税ができるとは限りません。納税を先送りできるという意味では効果的ですが、相続税についても考慮することが大事です。

 

また、相続時精算課税制度を利用するためには以下の条件を満たしている必要もあります。

 

① 贈与者は受贈者の直系尊属であって、贈与をした年の11日にはすでに60歳以上になっていること

② 受贈者は、贈与をされた年の11日にはすでに18歳以上になっていること

不動産贈与における特例措置

不動産贈与を行う際、次の特例措置を活用することにより贈与税の負担を軽くできるケースがあります。

配偶者控除の適用

配偶者に対する不動産の贈与では特例税率を適用できませんが、「配偶者控除」が適用できることがあります。

 

配偶者控除の適用で、基礎控除110万円に加え、最大2,000万円まで控除が可能です

 

ただし、次の条件を満たす必要があります。

 

① 婚姻期間が20年以上

② 居住用の不動産の贈与、またはその不動産を取得するための金銭の贈与

③ 同じ配偶者からの贈与に関して過去に配偶者控除を適用していない

住宅取得等資金に対する非課税措置

不動産そのものの贈与ではありませんが、令和411日から令和51231日までの間に、直系尊属から贈与された、特定の家屋の新築・取得・増改築等をするための金銭に関して、非課税にできる特例があります。

 

非課税にできるのは、「省エネ等住宅」に対しては1,000万円まで、それ以外の住宅に対しては500万円までです。

※省エネ等住宅とは、断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級、耐震等級、高齢者等配慮対策等級などに関して一定以上の性能を有しており、その性能を証する書類を贈与税申告書に添付して証明されたもののこと。

 

贈与税の計算自体はそれほど複雑ではありませんが、不動産の価額評価や特例の利用なども考慮すると、税制や不動産に精通した専門家に相談・依頼することが望ましいといえます。

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  • 所属団体
    • 東京税理士会京橋支部
    • 全国宅地建物取引業協会連合会
  • 経歴
    • 昭和63年株式会社伊勢丹
    • 平成4年税理士国家試験 合格
    • 平成9年株式会社タクトコンサルティング
    • 平成19年独立「薬袋税理士事務所」開業

事務所概要Office Overview

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